都道府県から日本を散歩する
東京都
とうきょうと
東京都は日本の首都であり、都庁は新宿区に置かれています。東西に細長い本土部と、太平洋に連なる伊豆諸島・小笠原諸島から成ります。本土部は西の山地から丘陵、武蔵野台地、東の低地へと段階的に低くなり、多摩川、荒川、隅田川、江戸川などが東京湾へ向かいます。山地の渓谷、台地の崖線、低地の水路、湾岸の埋立地、火山島の海岸が一つの都の中にあります。駅や大通りだけを見ていると平らに感じる場所でも、細い坂、石段、暗渠の曲がり、崖下の湧水をたどると、都市の形が地形に従っていることがわかります。
古代の東京都域は主に武蔵国に属し、国府と国分寺が多摩地域に置かれました。東山道武蔵路や鎌倉街道の跡、古墳、寺院跡は、現在の住宅地や畑の間に残っています。中世には武士団が各地に館や城を構え、川と台地の縁を利用して道と集落がつくられました。1590年に徳川家康が江戸城へ入り、1603年に江戸幕府が開かれると、城を中心に武家地、寺社地、町人地が広がりました。日本橋を起点とする街道、隅田川や運河の舟運、上水、堀、火除地が都市の骨格を形づくりました。現在の街路を歩くと、外濠の高低差、寺町のまとまり、旧町名、橋の位置に江戸の構造が残っています。
江戸は火災と水害を繰り返し、そのたびに町割りや防火の仕組みが改められました。明治維新後は東京府となり、鉄道、煉瓦街、官庁、学校、工場が建設されました。1923年の関東大震災では広い地域が焼失し、その後の復興事業で道路、公園、橋が整えられました。1945年の空襲でも多くの町が失われ、戦後の復興、高度経済成長、再開発によって景観は大きく変わりました。それでも、震災復興橋梁、戦災樹木、古い商店街、路地、共同井戸などが、都市が何度も作り直されてきたことを伝えています。高層建築の足元で古い石垣や水路跡を見つけると、異なる時代が同じ場所に重なっていることに気づきます。
東京都は区部だけではありません。多摩地域には丘陵、雑木林、湧水、養蚕や農業の歴史があり、山地には林業、石灰、わさび、集落を結ぶ峠道があります。島しょ部では火山、黒潮、漁業、塩、島酒、独自の祭礼や言葉が暮らしを形づくってきました。伊豆諸島の溶岩地形や小笠原諸島の海岸を歩くと、同じ東京都という行政区分の中に、都心とは異なる時間と距離があることを実感できます。
食も街の成り立ちを映します。江戸前の魚介、そば、寿司、天ぷら、佃煮、豆腐、漬物、和菓子は、人が集まる都市で食材を早く調理し、保存し、流通させる工夫から発達しました。練馬大根、小松菜、寺島なすなどの江戸東京野菜、多摩の酒やわさび、島の魚、塩、明日葉にも土地の違いが表れます。市場や商店街、路地の小さな店を歩けば、食が水路、街道、畑、海とつながってきたことが見えてきます。
東京を歩くとき、著名な建物を急いで巡るより、一つの川、一つの坂、一つの旧町名を手がかりにすると、都市の記憶へ入りやすくなります。台地から低地へ下る石段、暗渠の上の細道、城濠に沿う曲線、島の溶岩道を自分の足でたどると、東京は新しいものだけが並ぶ場所ではなく、地形と災害と暮らしの選択が何層にも積み重なった土地として見えてきます。
郷土料理・ご当地グルメ
この地域で親しまれている味を19件紹介します。べったら漬け
大根を塩で下漬けした後、米麹、砂糖、みりん、昆布などを合わせた床へ漬ける東京の漬物です。麹による甘味と香りを生かし、大根の水分と歯ごたえを残して仕上げます。表面が麹で粘り、衣服へ付くとべたべたすることが名称の由来とする説があります。江戸時代から日本橋周辺の市などで販売され、現在も秋を中心に食べられています。甘さや漬け期間は製造者によって異なります。
こはだの粟づけ
コハダを塩と酢で締め、炊いて冷ました粟とともに、酢、砂糖、塩などを合わせて漬ける東京の魚料理です。保存性を高めながら、コハダの酸味と粟の食感を組み合わせます。江戸前の魚として利用されたコハダを、正月や祝い事の料理として保存する方法として作られてきました。粟へ色を付ける場合もあり、魚の締め方、粟の量、甘酢の配合は製造者や家庭によって異なります。
うなぎの蒲焼
ウナギを背開きにして骨を除き、串へ刺して白焼きにし、蒸してから醤油、みりん、砂糖などを合わせたたれを付けて焼く江戸前の料理です。蒸す工程によって身をやわらかくし、余分な脂を落としてから焼き上げます。江戸時代に都市の外食文化とともに広まり、専門店で調理技術とたれが受け継がれてきました。静岡県では養鰻産地を背景に関東風と関西風の双方が見られるのに対し、東京都の江戸前では背開きにしたウナギを蒸してから焼く方法が基本です。
うどの酢味噌和え
東京うどの皮をむいて短冊切りなどにし、酢水へ浸してあくを抜いた後、白味噌、酢、砂糖、からしなどを合わせた酢味噌で和える東京の料理です。地下の室や穴蔵で光を遮って育てる軟化うどを利用し、北多摩地域などで春の料理として作られてきました。うどだけで和えるほか、わかめ、いか、貝などを加える場合があります。切り方と酢味噌の配合は家庭によって異なります。
もんじゃ焼き 中央区
小麦粉を水やだしで薄く溶き、キャベツ、揚げ玉、切りいかなどを混ぜ、鉄板で加熱しながら小さなへらで食べる中央区月島周辺の料理です。生地で鉄板へ文字を書いた「文字焼き」が名称の由来とする説があり、子どものおやつとして広まりました。現在は肉、魚介、餅、チーズなど多様な具材が使われ、生地の味付けや焼き方は店舗によって異なります。
佃煮 中央区
小魚、貝、小エビ、海苔、昆布などを、醤油、砂糖、みりんなどで水分が少なくなるまで煮詰める保存食品です。江戸時代、中央区佃島の漁師が魚介を長く保存するために作り、江戸市中へ販売したことから名称が広まったとされています。ご飯のおかずや酒肴、弁当の食品として利用されます。材料、煮汁、甘辛さ、煮詰める程度は製造者によって異なります。
柳川鍋 台東区 江東区
背開きにして骨を除いたドジョウを、ささがきごぼうとともに醤油、砂糖、酒などを合わせた割り下で煮て、卵でとじる東京の鍋料理です。江戸時代、身近に得られるドジョウを利用する庶民の料理として広まり、浅草や深川周辺の専門店で受け継がれてきました。ドジョウを丸ごと煮る丸鍋や、卵を使わない料理とは区別されます。割り下の甘さや卵の火入れは店舗によって異なります。
いもようかん 台東区
さつまいもを蒸して皮を除き、砂糖や少量の塩を加えて練り、型へ詰めて冷やし、四角く切る東京の和菓子です。寒天や小豆を主材料とする一般的な羊羹とは異なり、さつまいもの味と食感を生かして作ります。明治期に浅草の菓子店で、安価なさつまいもを使う菓子として考案されたとされています。砂糖の量、裏ごし、成形方法は製造者によって異なります。
桜もち 墨田区
小麦粉を水で溶き、薄く円形または長方形に焼いた生地で小豆あんを包み、塩漬けした桜の葉で巻く墨田区向島発祥の和菓子です。享保年間、長命寺の門番が落ち葉となった桜葉を塩漬けして餅を包んだことが始まりとされています。道明寺粉を使う関西系の桜餅とは製法が異なり、「長命寺」と呼ばれることもあります。生地の色や葉の枚数は製造者によって異なります。
ちゃんこ鍋 墨田区
鶏肉、魚、肉団子、豆腐、白菜、ねぎ、きのこなどを、大鍋で煮て食べる相撲部屋の鍋料理です。「ちゃんこ」は力士が作り、相撲部屋で食べる料理全般を指しますが、鍋料理が広く知られています。明治期以降、力士が同じ鍋を囲んで効率よく食事を取る料理として定着し、相撲部屋が集まる墨田区周辺の飲食店へも広まりました。だし、具材、味付けは部屋や店舗によって異なります。
深川めし 江東区
アサリをねぎなどと味噌や醤油で煮て、汁ごとご飯へかける方法と、アサリのむき身をご飯とともに炊き込む方法がある江東区深川周辺の料理です。江戸時代、アサリやハマグリが多く採れた漁師町で、漁の合間に食べる食事として広まりました。現在は「ぶっかけ」と「炊き込み」の両方が提供され、だし、味付け、具材は家庭や店舗によって異なります。
ねぎま鍋 葛飾区
マグロの身や脂の多い部分と、長ねぎを、醤油、酒、みりん、だしなどを合わせた汁で煮る東京の鍋料理です。「ねぎま」は、ねぎとマグロを組み合わせた名称とされています。江戸時代、保存や流通が難しかったマグロの脂身を、加熱して利用する庶民の料理として作られました。葛飾区などで伝承され、豆腐やせりを加える場合もあります。マグロの部位や割り下は家庭や店舗によって異なります。
八王子ラーメン 八王子市
醤油味のスープへ中華麺を入れ、表面をラードで覆い、細かく刻んだ生の玉ねぎを載せる八王子市のラーメンです。ラードが玉ねぎの辛みをやわらげ、甘みを引き出す組み合わせを特徴とします。昭和期から市内の飲食店で広まり、現在は多くの店舗で提供されています。麺、だし、醤油だれ、玉ねぎの切り方は店舗によって異なります。
治助芋のネギ味噌 奥多摩町
奥多摩町小河内地区などで栽培される小粒のじゃがいも「治助芋」を蒸すかゆで、刻んだねぎ、味噌、砂糖などを合わせたねぎ味噌を付けて食べる料理です。山間部で受け継がれてきた在来のじゃがいもを利用し、日常のおかずや農作業の食事として作られてきました。芋を丸ごと使う方法と、切って焼く方法があり、ねぎ味噌の甘さや加熱方法は家庭によって異なります。
おくたまワサビのTOKYO-X巻き 奥多摩町
細く刻んだ奥多摩産の根わさびを、東京都の銘柄豚TOKYO Xの薄切り肉で巻き、焼いた後に醤油やみりんなどで味付けする奥多摩町の料理です。地域で栽培されるわさびと東京都産豚肉を組み合わせる現代の地域料理として考案されました。加熱によって豚肉の脂とわさびの香りを合わせ、仕上げにすりおろしたわさびを添える場合もあります。味付けや巻き方は作り手によって異なります。
のしこみうどん 奥多摩町
小麦粉を練って幅広く切ったうどんを、煮干しや干ししいたけのだしへ入れ、ねぎ、にんじん、油揚げなどとともに醤油味で煮る奥多摩地域の料理です。麺を別ゆでせず、打ち粉が付いたまま汁へ入れるため、汁へとろみが付きます。山間部で栽培された小麦や身近な野菜を利用する日常食として作られてきました。麺の幅、具材、だし、味付けは家庭によって異なります。
くさや 新島村 八丈町
アオムロアジ、トビウオなどの魚を開いて内臓を除き、「くさや液」と呼ばれる発酵した塩水へ漬け、乾燥させて作る伊豆諸島の水産加工品です。塩が貴重だった島で漬け汁を繰り返し使ううちに、魚の成分と微生物による発酵が進んだとされています。新島村や八丈町などで製造され、焼いて酒肴やご飯のおかずにします。漬け時間や乾燥方法は生産者によって異なります。