都道府県から日本を散歩する
青森県
あおもりけん
青森県は本州の北端にあり、県庁所在地は青森市です。北には津軽海峡、西には日本海、東には太平洋があり、二つの半島が海へ向かって伸びています。県の中央には奥羽山脈が通り、その西側と東側では雪や風の表情が変わります。岩木山を望む平野、八甲田の山あい、十和田湖から流れ出す奥入瀬川、陸奥湾の穏やかな水面、下北半島の先に広がる海を順に思い浮かべると、一つの県の中に異なる方角の暮らしが重なっていることがわかります。歩くときは、駅前や大きな通りだけでなく、港へ向かう坂、雪を逃がすために幅を取った道、りんご畑の脇を抜ける農道、風除けの林、海辺の集落に残る細い路地へ目を向けると、地形と生活の結びつきが見えてきます。
青森県の時間は、近代の県成立から始まるものではありません。三内丸山遺跡では、縄文時代の大規模な集落跡が確認され、竪穴建物、墓、貯蔵穴、大型掘立柱建物などが計画的に配置されていました。土器や石器だけでなく、植物利用や交流の痕跡も残り、この北の土地で人々が長く暮らしを組み立ててきたことを伝えています。中世から近世にかけては、海峡を越える交易、日本海側の航路、南部と津軽の支配の違いが地域の文化を分けました。城下町の道筋や寺町、古い港の周囲を歩くと、同じ県内でも言葉、祭り、建物の配置が少しずつ異なる理由に触れられます。
青森ねぶた、弘前ねぷた、八戸三社大祭などの行事は、単なる見物の対象ではなく、町内ごとの準備、囃子、山車の保管場所、道幅と曲がり角まで含めて街のつくりと結びついています。祭りの時期でなくても、山車小屋や広場、古い商店街を歩けば、行事が日常の中でどのように支えられているかを想像できます。
食と産業も、海と山脈の配置から生まれています。津軽平野ではりんごをはじめとする果樹や米が育てられ、畑ではにんにくや長いもなどが作られます。陸奥湾ではほたて、太平洋側や海峡沿いではいか、さば、鮭などが水揚げされ、海岸ごとに港の匂いも市場の並びも違います。市場で魚や乾物を見ること、古い菓子店でりんごを使った品を選ぶこと、雪の季節に汁物や漬物を味わうことは、風景を食卓へつなぐ歩き方です。
青森県を歩くとき、名所を急いで結ぶ必要はありません。雪解け水が側溝を流れる音、海から入る風、果樹園の枝の並び、縄文遺跡の地面、寺町の曲がり角を一つずつ確かめると、北の端という一言では収まらない土地の層が見えてきます。湾の水面と山の稜線を交互に見ると、歩いた場所の方角も自然に記憶へ残ります。
郷土料理・ご当地グルメ
この地域で親しまれている味を21件紹介します。けの汁
大根、にんじん、ごぼう、わらび、ふき、豆腐、油揚げなどを細かく刻み、大豆をすりつぶしたものとともに昆布だしで煮て、味噌で調える津軽地方の料理です。小正月に大量に作り、数日間温め直して食べる習慣があります。「粥の汁」が津軽の言葉で変化した名称とされています。秋田県では山菜やきのこを味噌または醤油で調える形が見られるのに対し、青森県のけの汁はすりつぶした大豆を加えて味噌で仕上げる点に特徴があります。
貝焼き味噌
大きなホタテの貝殻を鍋の代わりにし、ホタテや魚、ねぎ、山菜などをだしと味噌で煮て、溶き卵でとじる津軽・下北地方の料理です。下北地方では「みそ貝焼き」とも呼ばれます。漁師が浜や船上で貝殻を調理器具として使った料理が起源とされています。卵が貴重だった時代には病人や産後の食事にも用いられました。具材、味噌、卵の量は地域や家庭によって異なります。
鱈のじゃっぱ汁
冬のマダラの頭、骨、皮、内臓などのあらを、大根、白菜、ねぎ、豆腐などと煮て、味噌や塩で調える津軽地方の汁物です。「じゃっぱ」は津軽の言葉で、魚をさばいた際に残る部分を指します。身以外の部位も余さず利用する漁師町の料理として作られてきました。肝や白子を加える場合もあり、使用する部位、野菜、味噌、塩加減は地域や家庭によって異なります。
けいらん
米粉などを練った白い生地で小豆餡を包み、鶏卵に似た形へ整えてゆで、焼き干しや昆布で取ったすまし汁へ入れる下北・南部地方の料理です。甘い餡入りの団子と塩味の汁を組み合わせ、婚礼、祭り、法事、来客時などの料理として作られてきました。温かい汁や冷たい汁で提供される場合があります。生地、餡、だし、団子の大きさは地域や家庭によって異なります。
べこもち
うるち米粉ともち米粉へ熱湯や砂糖を加えて練り、色を付けた複数の生地を組み合わせ、切った断面に花や植物などの模様が現れるよう成形して蒸す下北地方の郷土菓子です。端午の節句や祝い事、日常の茶請けとして作られてきました。名称は黒糖入りの模様が牛の背に似ていたことなどに由来する説があります。色、模様、粉の配合は家庭や作り手によって異なります。
津軽煮干しラーメン
煮干しや焼き干しで取っただしを醤油味のスープへ仕立て、中華麺を合わせる津軽地方のラーメンです。地域のそばやうどんに魚の乾物を使ってきた食文化を背景に、食堂やラーメン店で提供されてきました。澄んだあっさりしたスープの形式と、煮干しを多く使う濃厚な形式があります。煮干しの種類、だしの濃さ、麺の太さ、具材は店舗によって異なります。
豆しとぎ
水へ浸した青大豆をすりつぶし、米粉、砂糖、塩などを加えて練り、棒状や平たい形へ整える青森県南部地方の郷土菓子です。神仏へ米を供える「しとぎ」の食文化と結び付き、冬の行事や家庭のおやつとして作られてきました。加熱せずに食べる形式のほか、焼いて食べる場合もあります。大豆のつぶし方、米粉、砂糖、形は地域や家庭によって異なります。
煮あえっこ
大根、にんじん、ごぼう、わらび、ふき、豆腐、油揚げなどを細かく切り、だしで煮て、味噌や醤油で味付けする下北地方の料理です。秋から冬の日常食のほか、小正月、冠婚葬祭、地域の行事などにも作られてきました。野菜と山菜をまとめて調理し、保存していた食材を利用する雪国の料理です。豆類やこんにゃくを加える場合もあり、具材、切り方、味付けは家庭によって異なります。
鮫のすくめ
ゆでたサメの頭や身を骨から外してほぐし、大根、キャベツなどの野菜と、味噌、酢、砂糖などを合わせた酢味噌で和える津軽地方の料理です。保存や流通に向くサメを冬や正月の食材として利用し、頭部に残る身も無駄なく食べる料理として作られてきました。からしを加える場合もあります。サメの部位、野菜、酢味噌の甘さと酸味は地域や家庭によって異なります。
青森生姜味噌おでん 青森市
大根、こんにゃく、卵、ちくわ、つぶ貝などをだしで煮たおでんへ、味噌、すりおろしたしょうが、砂糖、みりんなどを合わせたたれをかける青森市の料理です。戦後、青森駅周辺の屋台で、冬の寒さの中を訪れる客のためにしょうが味噌を添えたことが始まりとされています。おでん種、味噌の種類、しょうが、甘さは家庭や店舗によって異なります。
味噌カレー牛乳ラーメン 青森市
味噌を基調としたラーメンスープへ、カレー粉や香辛料と牛乳を加え、中華麺、もやし、わかめ、メンマなどを合わせ、バターを載せることもある青森市の麺料理です。昭和期、市内の学生が複数の味を組み合わせて注文したことから生まれたとされています。味噌のこく、カレーの香り、牛乳のまろやかさを組み合わせ、辛さ、濃度、具材は店舗によって異なります。
のっけ丼 青森市
青森市の青森魚菜センターで、ご飯を入れた丼を受け取り、市場内の各店舗を巡って、まぐろ、ホタテ、イカ、ウニ、いくら、惣菜などから好みの具材を選んで載せる海鮮丼です。食事券と具材を交換しながら、自分で丼を組み立てる提供方式を特徴とします。使用できる魚介や惣菜は季節や水揚げによって変わり、選ぶ具材と盛り付けは利用者によって異なります。
弘前いがめんち 弘前市
イカの足や身を細かく刻み、キャベツ、玉ねぎ、にんじんなどの野菜と、小麦粉や卵を混ぜて成形し、油で揚げるか焼く弘前市周辺の料理です。刺身などに使った後のイカの足を無駄なく利用する家庭料理として津軽地方で作られてきました。醤油や味噌で下味を付ける場合もあります。イカの刻み方、野菜、つなぎ、揚げ方は家庭や店舗によって異なります。
弘前アップルパイ 弘前市
弘前市周辺で生産されるりんごを使い、砂糖やバター、香辛料などと加熱した果肉をパイ生地で包むか載せて焼くご当地菓子です。市内の洋菓子店、パン店、喫茶店などがそれぞれ異なるアップルパイを提供しています。使用するりんごの品種、果肉の形、甘味と酸味、シナモン、パイ生地、焼き方は店舗によって異なり、市内で食べ比べる文化が形成されています。
八戸らーめん 八戸市
煮干しの風味を生かしたあっさりした醤油味のスープへ、細い縮れ麺を合わせる八戸市のラーメンです。1928年ごろ、市内の食堂で提供された支那そばをルーツとし、煮干し、地鶏がら、豚骨などでだしを取る昔ながらの味が地域へ広まりました。2002年の東北新幹線八戸駅開業を機に復刻され、現在は加盟店を中心に提供されています。
せんべい汁 八戸市
鶏肉、魚、きのこ、ごぼう、にんじん、ねぎなどを煮ただし汁へ、汁物用の南部せんべいを割り入れて煮る八戸市周辺の料理です。米が育ちにくい南部地方で、小麦を使ったせんべいを保存食や主食として利用した食文化から生まれました。汁用せんべいは煮ても崩れにくく、だしを吸った弾力のある食感を持ちます。だし、肉、魚、野菜は家庭や店舗によって異なります。
いちご煮 八戸市 階上町
ウニとアワビを塩味を中心とする澄まし汁で煮て、青じそなどを添える八戸市・階上町周辺の料理です。乳白色の汁に浮かぶ赤みを帯びたウニが、朝もやの中の野いちごに見えることが名称の由来とされています。太平洋沿岸で正月、婚礼、祭りなどのハレの日に作られてきました。岩手県のいちご煮が久慈市・洋野町周辺に伝わるのに対し、青森県では八戸市・階上町周辺のハレの日の料理として受け継がれています。
黒石つゆやきそば 黒石市
太く平たい黒石やきそばをソースで炒め、ラーメンスープや和風だしなどの温かい汁をかけ、ねぎ、天かすなどを載せる黒石市の料理です。昭和期に、冷めた焼きそばへ温かい汁を加えて提供したことが始まりとする伝承があります。ソース味の麺とだし汁を組み合わせることを特徴とし、スープ、麺、具材、トッピングは店舗によって異なります。
十和田バラ焼き 十和田市
牛のばら肉と大量の玉ねぎを、醤油、砂糖、りんご、にんにくなどを使った甘辛いたれで味付けし、鉄板で焼く十和田市の料理です。戦後に三沢市周辺で生まれ、その後、十和田市の飲食店や家庭へ広がったとされています。玉ねぎを山状に盛り、肉と混ぜながら加熱する形式もあります。肉、たれ、玉ねぎの量、焼き方は店舗や家庭によって異なります。
大湊海軍コロッケ むつ市
じゃがいも、肉、魚介、野菜などを使った具を成形し、衣を付け、牛脂を含む油で揚げるむつ市大湊地区のコロッケです。明治期以降に大湊へ置かれた海軍部隊で提供された料理を参考に、地域の飲食店がご当地料理として復刻しました。牛脂を使って揚げることを共通する特徴とし、具材、形、衣、ソースは店舗によって異なります。
鰺ヶ沢ヒラメのヅケ丼 鰺ヶ沢町
鰺ヶ沢町周辺で水揚げされた天然ヒラメの刺身を、醤油を基調とする各店独自のたれへ漬け、ご飯へ載せる鰺ヶ沢町のご当地丼です。地域の飲食店が共通する料理名で提供し、日本海で水揚げされるヒラメを地域内で味わう取り組みとして展開されています。ヒラメの切り方、漬け時間、たれ、薬味、付け合わせは店舗によって異なります。