都道府県から日本を散歩する
鹿児島県
かごしまけん
鹿児島県は九州の南端に位置し、県庁所在地は鹿児島市です。薩摩半島と大隅半島が鹿児島湾を囲み、沖には種子島、屋久島、奄美群島などの島々が南へ連なります。桜島、霧島、開聞岳などの火山、シラス台地、リアス海岸、亜熱帯の森が一つの県内にあります。火山灰の道、港の石段、島のサンゴ石垣、山麓の用水を歩くと、火山と海が暮らしの場所と材料を決めてきたことがわかります。
古代には薩摩国と大隅国が置かれ、南西諸島は海上交通を通じて九州、大陸、琉球と結ばれました。古墳、国府跡、寺院、隼人に関わる史跡は、南九州に独自の文化と政治の歴史があったことを伝えます。中世には島津氏が勢力を広げ、山城、港、街道を結びました。近世の薩摩藩は薩摩、大隅、奄美を治め、琉球王国との関係を通じて砂糖や海外の品を取り込みました。麓集落の石垣と武家門、港町、島の集落を歩くと、統治と交易の仕組みが景観に残っていることがわかります。
幕末には集成館事業で反射炉、造船、紡績などの近代技術が試され、明治維新に関わる多くの人物が県域から出ました。旧集成館、寺山炭窯跡、関吉の疎水溝などを歩くと、工場だけでなく、水路、燃料、職人の仕事が近代化を支えたことが見えてきます。一方、西南戦争は県内各地に戦場と慰霊の記憶を残しました。史跡を人物の物語だけでなく、町と村が受けた影響とともに見ることが大切です。
火山は噴火と降灰をもたらす一方、温泉、地形、土壌を生みました。シラス台地では水を得る工夫が重ねられ、屋久島では深い森と多雨、奄美では亜熱帯の森とサンゴ礁が暮らしを形づくります。黒豚、さつま揚げ、鶏飯、きびなご、かるかん、焼酎、黒糖などの食は、畑、海、島、保存の知恵と結びつきます。大島紬、薩摩焼、薩摩切子、竹工などの手仕事も島と本土の材料と技術から育ちました。
鹿児島県を歩くなら、桜島を眺めるだけでなく、火山灰の積もる路地から疎水へ、武家屋敷の麓から港へ、屋久島の森から集落へ、奄美のサンゴ石垣から海岸へと足をつなぐとよいでしょう。本土と島々では言葉、植物、屋根、祈りの形が変わります。噴火碑、石垣、水路、黒糖小屋、古い船着場に目を留めると、火山、海上交流、農林漁業、近代産業が重なってきた時間が静かに見えてきます。
種子島には鉄砲伝来と宇宙開発に関わる場所があり、奄美群島には島ごとの言葉、唄、祭祀が残ります。島々を一括りにせず、港から集落へ歩いて植物や石垣の違いを見ると、海の距離が文化の違いを育てたことがわかります。
郷土料理・ご当地グルメ
この地域で親しまれている味を24件紹介します。三献
正月や祝いの席で食される儀式的な郷土料理です。餅入りの吸い物の赤椀、刺身の二の膳、鶏肉や豚肉の吸い物の黒椀の順に食し、各膳の合間に家族全員で焼酎の杯を回して飲みます。安政の大獄を機に身を潜めた西郷隆盛が祝言をあげた際にも振る舞われたといわれています。
酒ずし
ごはんの上にタイやエビなどの海の幸、ふきやたけのこなどの春の具材を重ね、地酒である灰持酒をたっぷり混ぜこむことで発酵を促した祝い食です。島津家の宴会で余ったごちそうに飲み残しの酒をかけたのが由来とされ、上流階級のごちそうから現代へと受け継がれました。
さつま揚げ
魚のすり身に豆腐などをつなぎとして混ぜ、地酒や砂糖で甘く味付けして油で揚げた練り物です。沖縄の「チキアギー」にルーツを持つといわれており、地元では「つけ揚げ」などと呼ばれ広く親しまれています。
きびなごの刺身
豊かな漁場に恵まれた鹿児島県で獲れるきびなごを刺身にした料理です。酢味噌をつけて食べるのが一般的な味わい方として定着しています。
豚骨料理
豚肉を用いた料理で、奄美料理から発展したとされています。奄美地方ではあばら肉だけでなく豚足なども用いて作られます。
がね
小麦粉または蕎麦粉の衣に、千切りにしたさつまいもやごぼうを混ぜ合わせて油で揚げた料理です。宮崎県のがねが都城地方で甘みのある衣を使い、カニの脚に似せた形を特徴とするのに対し、鹿児島県ではさつまいもやごぼうを小麦粉またはそば粉の衣でまとめる作り方があります。
さつま汁
骨付きの鶏肉のぶつ切りに、大根やにんじん、ごぼう、ねぎなどを加えて煮込んだ具だくさんの味噌汁です。薩摩藩で盛んだった闘鶏で負けた鶏を殺して食べたのが始まりとされています。
からいもごはん
鹿児島県で特産品として広く栽培されているさつまいも(からいも)を、お米と一緒に炊き上げたご飯です。江戸時代に伝来して以降、火山灰の台地に適した救荒作物として広まり、庶民の主食として定着しました。
あくまき
端午の節句に欠かせない郷土菓子です。もち米を木灰汁に浸し、竹の皮で包んで炊き上げて作ります。食べるときにはきな粉や黒糖をたっぷりとまぶすのが特徴で、戦国時代の薩摩武士の兵糧食がルーツといわれています。
軽羹
良質な天然の山芋(自然薯)と米粉、砂糖だけで作られる真っ白な蒸し菓子です。しっとりとした弾力のある食感が特徴で、島津斉彬公の命により誕生したとされる歴史を持つ、鹿児島を代表する銘菓です。
両棒餅
2本の竹串に刺した一口サイズのつきたての餅に、とろみのある甘辛い醤油ダレをたっぷりとかけた焼き餅です。現地では出来立てを味わうことができ、観光客や地元民のお茶請けとして人気を集めています。
いこもち
煎った米の粉である「いこ粉」を使用して作る郷土菓子です。独特の香ばしさと粘りがあり、漢字では「射粉餅」と書かれます。お祝い事の配り物としても重宝される伝統的なお菓子です。
げたんは
小麦粉の生地に黒糖をたっぷり染み込ませた素朴な味わいの郷土菓子です。下駄の歯に似た三角形や台形の形をしており、黒糖の蜜で泥にまみれた下駄の歯のように見えることからその名がついたとされています。
ふくれ菓子
昔ながらの蒸しパンのような存在の郷土菓子です。重曹でふっくらと膨らませて作られ、黒糖の優しい甘さとふんわりとした食感が特徴です。現在ではココアやシナモン味などもあり、家庭の味として親しまれています。
ねったぼ
蒸したサツマイモとつきたての餅を一緒について練り上げた、ボリューム満点の家庭のおやつです。芋の自然な甘みが強く、きな粉をたっぷりとかけて食べます。からいもねったぼとも呼ばれます。
かからん団子
サルトリイバラの葉である「かからん葉」で包んで作られる団子です。葉の持つ独特の爽やかな香りが楽しめ、病気にかからない(かからん)という願いが込められた縁起の良いお菓子です。
鹿児島ラーメン 鹿児島市
豚骨を基本に、鶏がら、野菜、魚介などを組み合わせたスープへ中華麺を入れ、チャーシュー、もやし、ねぎなどを載せる鹿児島県のラーメン文化です。県内の食堂や専門店で独自に発達し、食事前に大根の漬物を添える店もあります。単一の型ではなく、スープ、麺、具材は店舗や地域によって異なります。
枕崎かつおラーメン 枕崎市
かつお節やかつおのあらなどで取ったスープへ中華麺を合わせ、かつおの切り身、つみれ、削り節などを使って仕上げる枕崎市のご当地ラーメンです。かつお漁業とかつお節製造が盛んな地域の食材を生かす料理として、地元の飲食店が展開しました。スープ、麺、かつおの使い方、具材は店舗によって異なります。
枕崎鰹船人めし 枕崎市
温かいご飯へ新鮮なかつおの刺身、かつお節、海苔、ねぎなどを載せ、かつおだしをかけて食べる枕崎市のご当地丼です。漁師が船上で食べた食事をイメージし、かつお漁業とかつお節の町を発信する料理として地域の飲食店が開発しました。刺身、だし、たれ、薬味は店舗によって異なります。
文旦漬 阿久根市
阿久根市などで作られる、大きなサボン(文旦)の皮を砂糖で煮詰めた郷土菓子です。ほろ苦さと甘さのバランスが絶妙で、お茶請けだけでなくお酒のつまみとしても喜ばれる上品な逸品です。
さつまえび雑煮 出水市
鹿児島県の北部に位置する出水市で獲れる海の幸である「クマエビ」を使用した雑煮です。
指宿温たまらん丼 指宿市
指宿地域の肉、魚介、野菜などをご飯へ盛り、温泉の熱を利用して作る温泉卵を載せる指宿市のご当地丼です。温泉地と地域食材を結び付ける料理として、市内の飲食店がそれぞれの丼を提供しています。主材料、たれ、卵の火入れ、薬味、盛り付けは店舗によって異なり、統一した一つのレシピではありません。
鶏飯 奄美市
茶碗に盛ったごはんに、ほぐした鶏肉、錦糸卵、しいたけ、パパイヤ漬けなどの具材を乗せ、丸鶏から取った熱いスープをかけてお茶漬けのように食べる郷土料理です。薩摩藩の役人をもてなす殿様料理として発祥し、現在では学校給食でも定番となるほど県内全域で親しまれています。
加治木まんじゅう 姶良市
姶良市加治木町の名物として知られる酒饅頭です。ほのかな麹の香りとたっぷりの餡が特徴で、行列ができるほど地元民の心を掴んでいる蒸したてのお菓子です。