都道府県から日本を散歩する
沖縄県
おきなわけん
沖縄県は日本列島の南西に位置し、県庁所在地は那覇市です。沖縄本島、宮古諸島、八重山諸島、大東諸島など多くの島々からなり、東シナ海と太平洋に囲まれています。サンゴ礁、石灰岩の台地、マングローブ、白砂の浜、亜熱帯の森が島ごとに異なる風景をつくります。サンゴ石灰岩の道、御嶽への小径、港の防波堤、集落の石垣を歩くと、海が島々を隔てるだけでなく、長く結ぶ道であったことがわかります。
琉球列島には旧石器時代から人の暮らしがあり、貝塚、集落跡、墓、御嶽が各地に残ります。中世には各地の按司がグスクを築き、15世紀に琉球王国が成立しました。首里城、今帰仁城跡、中城城跡、斎場御嶽などを歩くと、政治、信仰、海上交通が丘陵と海を見渡す場所に配置されたことが見えてきます。琉球王国は中国、日本、朝鮮、東南アジアとの交易を行い、言語、音楽、染織、陶芸、食に多様な文化を取り入れました。
1609年の薩摩侵攻後、琉球王国は中国との冊封関係を保ちながら薩摩藩の支配も受けました。1879年の琉球処分によって沖縄県が設置され、制度と言語、暮らしは大きく変わりました。島々では人頭税、移住、出稼ぎ、海外移民などの歴史もあります。港、番所跡、古い井戸、集落の拝所を歩くと、王国の中心だけでなく、離島の人々が海を越えて暮らしをつないだことがわかります。
1945年の沖縄戦では住民を巻き込む地上戦によって多くの命と集落、文化財が失われました。戦跡、壕、慰霊碑、平和の礎を歩くときは、風景の美しさと同時に、そこに残る記憶へ向き合う必要があります。戦後はアメリカ統治を経て1972年に日本へ復帰しましたが、基地に関わる負担と土地の問題は現在にも続きます。復元された城跡や再建された町並みの下には、失われた道と暮らしの時間があります。
紅型、芭蕉布、琉球絣、壺屋焼、琉球漆器、三線などの手仕事は、島の植物、土、交易、祈りから育ちました。ゴーヤーチャンプルー、沖縄そば、豆腐よう、黒糖、海ぶどう、八重山そばなどの食にも島ごとの違いがあります。沖縄県を歩くなら、海岸だけでなく、グスクから御嶽へ、市場から壺屋の路地へ、離島の港から集落の井戸へと足をつなぐとよいでしょう。石垣、防風林、亀甲墓、戦跡、サトウキビ畑に目を留めると、交易、祈り、戦争、復興が島々に重なってきた時間が静かに見えてきます。
宮古島の地下水、八重山のマングローブ、大東島の開拓地など、島ごとに水の得方と土地の使い方が異なります。港から井戸や御嶽へ歩き、島の風と地面の質を確かめると、沖縄という一つの名称の中に複数の島の歴史があることがわかります。
郷土料理・ご当地グルメ
この地域で親しまれている味を21件紹介します。ジーマーミ豆腐
生落花生の搾り汁にいもくずを水で溶いて火にかけ、練り上げて冷やし固めた料理です。ゴマ豆腐のようなとろりとした口当たりと独特の風味が特徴で、だしや醤油で作ったかけ汁とおろしショウガをのせて食べます。名前のジーマーミは土の中に豆ができる落花生を意味し、ピーナッツアレルギーには注意が必要です。琉球王朝時代から貴重な食材として扱われ主にハレの日に用いられていましたが、現在はスーパー等でも販売され日常的に親しまれています。
ポークたまごおにぎり
ご飯へ焼いたポークランチョンミートと卵焼きや目玉焼きを重ね、海苔で挟むか包む沖縄県のおにぎりです。戦後に普及した缶詰のポークを、家庭の弁当や食堂で卵と組み合わせる食文化から定着しました。油味噌、昆布、野菜、揚げ物などを加えることもあり、形、具材、味付けは家庭や店舗によって異なります。
スクガラス
アイゴの稚魚である「スク」を天然塩にじっくりと漬け込み、約1年かけて熟成発酵させた塩辛です。沖縄では島豆腐の上にのせて酒の肴として食べるのが一般的で、強い塩辛さが豆腐の旨味を引き出し、豆腐が塩辛さを和らげる絶妙な食感が楽しめます。スクは旧暦の6月と7月の大潮の日に群れをなしてやってくるため、海からのボーナスと呼ばれますが、藻を食べてお腹が臭くなる前の生まれて2日以内の稚魚のみを昔ながらの追い込み漁で水揚げして作られます。
足ティビチ
沖縄の言葉で「チマグー」と呼ばれる豚の足(てびち)を、昆布や大根などと長時間煮込んだ料理です。皮を軽く焼いて湯洗いし、泡盛を入れた湯で下茹でした後、骨が抜けるほど柔らかくなるまで煮込みます。軟骨やゼラチン質が多く含まれており、とろける食感と独特の風味が味わい深い一品です。長寿県であった沖縄に定着している、体の悪い箇所と同じ部位を食べて治す「以類補類」の思想から、足の調子が悪い時にも食され、かつては宮廷料理としても用いられました。
沖縄そば
蕎麦粉を一切使わず小麦粉とかん水で練って作る麺料理です。沖縄本島ではカツオ節と豚骨をベースに煮干しや昆布を加えたコクのあるスープと、コシのある太ちぢれ麺や平打ち麺が主流です。具材には三枚肉や軟骨ソーキなどがのせられ、具材によって「ソーキそば」などと呼び名が変わります。本土復帰後、名称表示の問題から「そば」と呼べなくなる危機がありましたが、組合の尽力により1978年10月17日に特殊名称として認可され、この日は沖縄そばの日とされています。
サーターアンダーギー
沖縄の方言でサーター(砂糖)、アンダ(油)、アギ(揚げ)を意味する、球状の揚げ菓子です。小麦粉、鶏卵、砂糖を合わせた生地を丸め、低温の油でゆっくりと揚げて作ります。内部の膨張によって表面がぱっと割れる様子が、口を開けて笑っている姿や花が咲くように見えることから、縁起の良いお菓子として結納や結婚式などの祝い事で振る舞われます。琉球王国時代に中国から伝わった「開口笑」という菓子が起源とされ、現在も家庭などで広く親しまれています。
ゴーヤーチャンプルー
夏野菜の王者といわれるゴーヤーと島豆腐を炒め合わせた、沖縄県を代表する庶民料理です。「チャンプルー」とは沖縄の言葉でさまざまなものを混ぜ合わせるという意味があり、きびしい自然環境のもとで普段の食事から病気の予防を行う「医食同源」の考え方を体現しています。ビタミンが豊富で苦味のあるゴーヤーと、大豆の風味が強い島豆腐が絶妙に調和し、豚肉や卵なども一緒に炒めることで栄養バランスの良い一品となり、現在では全国的な知名度を誇ります。
カーサームーチー
もち粉に水を混ぜて砂糖や黒糖で味付けし、香りの良い月桃の葉(カーサー)で包んで蒸し上げたお餅で、鬼餅とも呼ばれます。沖縄県では旧暦の12月8日が「ムーチーの日」とされ、仏壇や家の守護神である火の神にお供えして、子供の健康祈願と厄払いを行う風習があります。かつては餅を蒸した後のお湯を門などにまいて厄を払う習慣もありました。この時期は「ムーチービーサ」と呼ばれる沖縄特有の強い風を伴う寒さが到来する季節でもあり、年中行事と深く結びついたお菓子です。
ミヌダル
豚のロース肉の薄切りに黒ゴマだれをたっぷりとまぶし、蒸し上げて作る料理です。黒ゴマによる真っ黒な仕上がりが特徴で、かつては琉球王国の宮廷料理としても用いられていました。黒ゴマの香ばしい風味と豚肉の旨味を味わう料理として、現在も沖縄県内で親しまれています。
ラフテー
沖縄県を代表する伝統的な豚肉料理で、皮付きの豚の三枚肉をじっくりと煮込んで作ります。豚の角煮に似ていますが、琉球料理に根差した料理として受け継がれてきました。「豚に始まり豚に終わる」とも表現される沖縄の食文化では、肉だけでなく内臓や顔、耳なども料理に活用され、豚を余すところなくいただく習慣があります。
中身汁
豚の内臓を意味する「中身」を使った沖縄県の郷土汁物です。豚肉をよく食べる沖縄県で、肉だけでなく内臓まで余すところなく料理に活用する食文化から生まれました。「鳴き声以外はすべて食べる」といわれるほど、豚を大切に扱う地域の考え方を伝える料理で、日常の食事だけでなく祝い事などでも食べられています。
クーブイリチー
沖縄の言葉で昆布を意味する「クーブ」を使った代表的な郷土料理です。「イリチー」は炒め煮を指し、刻んだ昆布や乾物、根菜類などを細切りにして豚肉などと炒め、だし汁を加えて柔らかく煮込みます。昆布と豚肉の旨味を生かした料理で、日常のおかずとしてだけでなく、祝い事や法事などにも用いられています。
クファジューシー
沖縄の言葉で炊き込みご飯を指す「ジューシー」の一種です。雑炊のように柔らかく仕上げる「ヤファラジューシー」に対し、硬めに炊き上げたものを「クファジューシー」と呼びます。豚肉や昆布などの具材を米と一緒に炊き込み、旧盆をはじめ、地域の人々や親戚が集まる年中行事でも振る舞われてきた行事食です。
ちんすこう
琉球王国時代後期の19世紀に、王家の料理人であった新垣淑規が、冊封使をもてなすために学んだ中国菓子を基に考案したとされる琉球菓子です。蒸しカステラのような菓子を焼き固めたもので、クッキーに似た食感があります。かつては祝い事など特別な席で食べられ、明治時代以降に庶民へ広まり、現在は沖縄を代表する菓子として親しまれています。
チンビン
小麦粉と黒糖を水で溶いた生地を鉄板で薄く焼き、くるくると巻いて作る沖縄県の郷土菓子です。黒糖風味の薄い生地はクレープにも似た形をしています。かつては旧暦5月4日の「ユッカヌヒー」に開かれた玩具市に合わせ、子どもの成長や健康を願って仏壇へ供える行事食として作られました。現在も素朴なおやつとして親しまれています。
サングァチグァーシ
「三月菓子」とも呼ばれる、小麦粉、鶏卵、砂糖などを使った長方形の揚げ菓子です。生地を厚さ1センチほどに伸ばして名刺大に切り、表面に縦方向の切れ目を入れて低温の油で揚げます。旧暦3月3日の女の子の節句に浜辺へ出かける「浜下り」の際、重箱の三月御重に詰めて持参し、健康や厄払いを願って食べられてきた行事食です。
八重山そば 石垣市
石垣島などの八重山諸島を中心に食べられている郷土麺料理です。沖縄本島の沖縄そばとは異なり、細いストレート麺を使用するため柔らかく優しい食感が楽しめます。スープはカツオ節を主体としたあっさり味で、脂分が少なくすっきりした後味です。細切りにした豚肉やかまぼこを少量のせるだけのシンプルな構成が基本で、爽やかな香りを持つ「ピパーツ(島胡椒)」をかけて風味を引き立てるのが地域特有の食べ方です。トッピングの自由度が高く、地元で長く親しまれています。
宮古そば 宮古島市
宮古島を中心に親しまれている、沖縄そばから派生した独自の麺料理です。うどんに似た太くストレートな麺を使用し、スープはカツオ節と豚骨をベースにしながらも脂分を控えた透明感のあるあっさりとした味わいが特徴です。基本の具材は三枚肉とかまぼこですが、かつてはこれらの具材を麺の下に隠して盛り付け、食べ進めると具材が現れる「隠し具」という独自の文化がありました。観光客だけでなく、地元の住民にとっても毎日食べても飽きない日常食として深く定着しています。
タコライス 金武町
香辛料で味を付けたひき肉、チーズ、レタス、トマトなどを温かいご飯へ盛り、サルサソースを添える沖縄県の料理です。1980年代、金武町でタコスの具をご飯へ載せ、米軍関係者にも量と価格を満たす料理として提供したことから広まりました。肉、辛さ、野菜、チーズ、ソースは店舗や家庭によって異なります。
大東そば 南大東村 北大東村
南大東島および北大東島で受け継がれている独自の麺料理です。八丈島からの移民文化の影響を受け、うどんと沖縄そばが融合して独自の進化を遂げた背景を持ちます。もっちりとした食感とスープの絡みが抜群な平打ちちぢれ麺を使用するのが最大の特徴です。スープは鶏ガラや豚骨、カツオ節を合わせたあっさりとした味わいで、具材には三枚肉やかまぼこ、ネギなどがシンプルに盛り付けられます。現地だけでなく那覇市内でも専門店が存在し、幻のそばとして人気を集めています。
イーヤチ 竹富町
八重山列島の竹富島に古くから伝わる地域固有の料理です。もち米を基本に、もち粟や小豆などを混ぜ合わせて作られます。島で受け継がれてきた食材と調理文化を伝える料理で、竹富島が属する沖縄県竹富町の郷土料理として記録されています。